賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和5年)より

監督指導結果のポイント

令和5年に全国の労働基準監督署で取り扱った賃金不払事案の件数、対象労働者数及び金額は以下のとおり。

  1. 件数 21,349件(前年比818件増)
  2. 対象労働者数 181,903人(同2,260人増)
  3. 金額 101億9,353万円(同19億2,963万円減)

労働基準監督署が取り扱った賃金不払事案(上記1)のうち、令和5年中に、労働基準監督署の指導により使用者が賃金を支払い、解決されたものの状況は以下のとおり。

  1. 件数 20,845件(97.6%)
  2. 対象労働者数 174,809人(96.1%)
  3. 金額 92億7,506万円(91.0%)賃金不払いと監督指導の事例(業種:飲食業)

賃金不払いと監督指導の事例(業種:飲食業)

事案の概要

  • 月60時間を超える時間外労働に対して、法定の割増率(50%以上)を下回る割増率で計算されていた。
  • 割増賃金の基礎として算入すべき賃金(役職手当、精勤手当等)を除外して割増賃金が計算されていた。
  • 一部の労働者に対して固定残業代として、月40時間分の割増賃金が支払われていたが、40時間を超過した時間については割増賃金が支払われていなかった。

労働基準監督署の指導

  • 月60時間を超える時間外労働に対して、法定の割増率(50%以上)で計算して、支払うこと。
  • 割増賃金の基礎として算入しなければならない賃金を全て足し上げた上で、割増賃金を再計算し、実際の支払額との差額を支払うこと。
  • 月40時間を超える時間外労働に対する割増賃金を再計算し、固定残業代として支払った割増賃金額との差額を支払うこと。

割増賃金の適正な支払い(ポイント)

月60時間を超える割増賃金率の引き上げ
令和5年4月1日から、中小企業の月60時間超に対する割増賃金率が50%以上に引き上げられました。
増賃金の基礎となる賃金
割増賃金の基礎として算入しない賃金は、①家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤住宅手当、⑥臨時に支払われた賃金、⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の7種類のみとされており、これらに該当しない場合は、割増賃金の基礎に算入する必要があります。
固定残業代
時間外労働等に対する割増賃金を基本給や諸手当にあらかじめ含める方法で支払う場合には、
・就業規則等において、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別できるようにする必要があること
・割増賃金に当たる部分の金額が、実際の時間外労働等の時間に応じた割増賃金の額を下回る場合には、その差額を支払う必要があること
に留意が必要です。

<厚生労働省賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和5年)を公表します」>
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41907.html

法改正への未対応や、誤った給与計算により思わぬ賃金不払が発生していることもあります。
ご不明点等ございましたら、ぜひご相談ください。